糖尿病Diabetes mellitus
糖尿病の相談をしたい方へ
糖尿病治療の目標は、患者さまが「健康な人とかわらない人生」を送れるようになることです。そのためには糖尿病合併症、動脈硬化性疾患の発症・進展をふせぎ、血糖値、血圧、脂質代謝、体重などを良好にコントロールしていくことが大切です。
当院ではただ血糖値を下げることが良い治療法とは考えておりません。患者さま一人一人に合う治療法を一緒に考え、オーダーメイドの治療をおこなってまいります。
糖尿病専門医として、患者さまが安心して治療を受けていただけるように努めてまいりますので、末長くよろしくお願いいたします。
当院の特徴Features
糖尿病専門医の診断・治療
糖尿病治療は日々進化しています。専門医として患者さまの現在の体調に合わせてお薬の量や種類を調整し、「具体的にどうすればいいか」を丁寧にお伝えするようにいたします。また糖尿病と関連が深い、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病の治療もお任せください。あわせて、糖尿病合併症管理もおこないます。
糖尿病の迅速検査
糖尿病の診療に必要な、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー、グリコヘモグロビン)、血糖値、尿検査の即日検査が可能です。HbA1cは過去1〜2ヶ月間の平均血糖値を示し、血糖コントロールの指標となります。
次の方は是非ご相談ください!
- 気になる症状がある方
- 健診などで血糖やHbA1cの異常を指摘された方
- 糖尿病の家族歴がある方
- 治療中だが改善しない方
- 糖尿病についてあまり理解していない方
- 治療や検査を再開したい方
当院で治療可能な糖尿病Treatable
- 2型糖尿病
- 1型糖尿病
- 境界型糖尿病(耐糖能異常)
- 妊娠糖尿病
- 糖尿病合併妊娠
- その他の特定の機序、疾患による血糖異常
糖尿病とはAbout diabetes
通常、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)はインスリン、グルカゴンやインクレチンなどのいくつかのホルモンがバランスよく働いて、一定の範囲内に保つように調整されています。
ところが何らかの原因でインスリンの効果が発揮されないと、ブドウ糖が血液中にだぶついてしまいます。この状態を高血糖といい、高血糖の状態が長く続くのが糖尿病です。2型糖尿病の原因として「かかりやすい体質」と「肥満、食べすぎ、運動不足ストレス、喫煙、加齢など」が関係しています。1型糖尿病は主に膵β細胞破壊によって起こります。
糖尿病の症状
糖尿病の初期には症状がないことが多いです。ある程度血糖値が高くなってくると次のような症状が出ます。
- のどが渇く
- 水や清涼飲料水などをたくさん飲む
- トイレに行く回数が増える
さらに高血糖が悪化すると次のような症状が出ます。
- 体重が減少する
- 嘔吐、だるさ
→糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態の発症
糖尿病の合併症Complications
血糖値が高い状態が長く続くと全身の血管や神経がダメージを受けて様々な合併症を引き起こします。合併症が糖尿病の予後を悪くします。高血糖がもたらす障害は大きく分けて2つあります(細小血管障害、大血管障害)。
細小血管障害(三大合併症 トリオパチー)
- (し)神経障害:手足にしびれが生じます。
- (め)網膜症:ものが見えにくい 目の血管の病気で視力低下・失明をきたします。
- (じ)腎症:足がむくむ、尿に蛋白が出る、悪化すると透析となります。
これらの疾患の頭文字を取って「しめじ」と覚えましょう。日本人の透析導入の第一位が糖尿病性腎症です。
大血管障害(心臓や脳の血管で生じる病気)
- (え)壊疽(閉塞性動脈硬化症):足の血管が狭くなることや、もしくは閉塞し、下肢の痛みを伴います。悪化すると足が腐り壊疽(えそ)に至ることもあります。
- (の)脳梗塞:まひなど深刻な後遺症が残ることや、死に至ることもあります。
- (き)狭心症/心筋梗塞:心臓への栄養を送る太い血管の内側が狭くなったり、詰まったりして、心臓への血流が障害された状態です。
これらの疾患の頭文字を取って「えのき」と覚えましょう。
その他の合併症
骨折、認知症、歯周病、癌、感染症などのリスクが高くなると言われています。
特に日頃から足のケアを心がけましょう。
糖尿病の治療Treatment
糖尿病の治療では、食事療法と運動療法の継続が大切です。適切な食事運動を続けても血糖コントロールを達成できない場合、薬物療法もおこないます。 下記の表をもとに、血糖コントロールをおこないます。
血糖コントロール目標(2013年6月1日以降)
治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する。
- 適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標とする
- 合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする。
対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満をおおよその目安とする。 - 低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする。
- いずれも成人に対しての目標値であり、また妊娠例は除くものとする。
食事療法
糖尿病の治療の一環として、食事療法は基本とされています。しかし、血糖値や体重を第一の目標にすると食事療法の負担がかかり、苦痛となってしまうこともあります。まずは自分にあった食事療法を見つけて簡単にできることからはじめてみましょう。
- 食べ過ぎないように腹八分目を心がけましょう
- ゆっくりよく噛んで食べましょう
- 1日3食決まった時間に食事をしましょう
- 野菜から先に食べましょう
- 食物繊維(野菜・きのこ・海藻類)を多く取りましょう⇨目標1日20-25g摂取
- 和食中心のバランスの良い食事をしましょう
- アルコールは1日20gまでにしましょう
- 揚げ物に偏らないようにしましょう
- 高血圧や腎臓病があれば塩分は6g未満としましょう
食事療法のポイント
- 食べる量(摂取エネルギー)
- 栄養バランスの良い食事
- 食事のタイミング
具体的には、下記のことを心がけましょう。
- 標準体重を求めましょう 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
- 摂取エネルギー量を決めましょう
- 軽労働者(デスクワーク主体)
- 25-30(kcal)×標準体重(kg)
- 中労働者(立ち仕事主体)
- 30-35(kcal)×標準体重(kg)
- 重労働者(力仕事主体)
- 35(kcal)×標準体重(kg)
- 肥満者
- 20(kcal)×標準体重(kg)
運動療法
糖尿病の治療では運動療法は基本とされていますが、運動したくてもできないという方も多いのではないでしょうか。
例えば、時間が取れない、仕事で疲れている、面倒である、膝が痛いなどの身体に支障がある、仕事が運動になっている、など…。
まずはできることを目標にしましょう。それが成功のコツです。
運動を継続しているとインスリンの働きがよくなり、合併症の予防や全身の健康維持に繋がる効果があります。
患者さまの状態によっては禁止もしくは制限する必要があります。運動療法をはじめる前に、必ず主治医と相談しましょう。
- 運動の急性効果として血糖値が下がります(急性効果)
- 運動を続けることでインスリンの働きが改善されます(慢性効果)
- 肥満の解消に役立ちます
- 転倒、骨粗しょう症の予防になります
- 高血圧やコレステロール値、中性脂肪の改善につながります
- 心肺機能をよくします
- 運動能力が向上します
- ストレスを解消します
薬物療法
患者さまの状態、合併症の有無、薬剤の作用特性などを考慮して薬剤を選択する必要があります。
糖尿病の状態は人によって様々ですので、それに合わせて処方し、目標の血糖コントロールを目指します。
経口血糖降下薬
薬剤名 | 効果 |
---|---|
DPP-4阻害薬(インスリン分泌促進系・血糖依存性) | インスリン分泌を促進する働きとグルカゴンを抑制する働きにより高血糖を改善します。 |
GLP-1受容体作動薬(インスリン分泌促進系・血糖依存性) | インスリン分泌を促進する働き、グルカゴンを抑制する働き、食欲を抑制する働きがあります。 |
イメグリミン(インスリン分泌促進系・血糖依存性) | ミトコンドリアへの作用を介してインスリン分泌を促進し、インスリンの働きを高めます。 |
スルホニル尿素(SU)薬(インスリン分泌促進系・血糖非依存性) | すい臓からのインスリン分泌を促進します。 |
速効型インスリン分泌促進薬 グリニド薬(インスリン分泌促進系・血糖非依存性) | すい臓からのインスリン分泌を速やかに促進し、食後の血糖上昇を抑制します。 |
ビグアナイド薬(インスリン分泌非促進系) | 肝臓で糖新生を抑制し、インスリンの働きを高めます。 |
チアゾリジン薬(インスリン分泌非促進系) | 筋肉・肝臓や脂肪組織でのインスリンの働きを高めます。 |
α—グルコシダーゼ阻害薬(インスリン分泌非促進系) | 小腸での糖の吸収を遅らせることで、食後の血糖上昇を抑制します。 |
SGLT2阻害薬(インスリン分泌非促進系) | 腎臓での糖の再吸収を抑制することで、尿中の糖の排泄を促進します。 |
GLP-1製剤
健康な人の食事に伴い小腸から分泌されるホルモンであるインクレチンを糖尿病薬にしたものです。
経口薬と注射製剤があります。血糖値を下げるだけではなく、食べすぎを防ぎ体重減少が期待されます。
インスリン療法
1型糖尿病や一部の2型糖尿病患者さまでは、膵臓からのインスリン分泌が不足するため自己注射によりインスリンを補う必要があります。2型糖尿病では、インスリンを開始しても血糖コントロールが良くなれば中止できることもあります。
インスリン製剤には様々な種類がありますが、患者さまの糖尿病の状態によって使い分けます。
また、注射頻度も1日1回注射する方から1日4〜5回の頻回注射する方まで様々です。CSIIをおこなう場合もあります。
- 速攻型or超速攻型インスリン製剤:追加分泌として作用する
- 持効型溶解or中間型インスリン製剤:基礎インスリン分泌として作用する
- 配合溶解インスリン製剤
- 混合型インスリン製剤
- 基礎インスリン製剤とGLP1受容体作動薬の配合注射薬
自己血糖測定
自分自身で血糖値を測定し、日常生活での血糖の変化を知ることができます。
患者さま自身が測定した血糖値は、食事・運動・薬物療法について検討して良いコントロールに近づける上で大変参考になります。自己検査用グルコース測定器や持続自己血糖測定器(Free Styleリブレ)などを用います。
低血糖
血糖値が70mg/dl未満の状態です。低血糖になると、空腹感、あくび、倦怠感、目のかすみ、冷や汗、動悸、手の震え、顔面蒼白、けいれん、昏睡などが起きます。低血糖の対応としてはブドウ糖を内服する必要があります。